信義則や権利濫用の禁止って何ですか?
法治国家における行動原理であり、契約行動において従うべき心構え的なものと考えれば良いと思います。
信義則
信義則は、信義誠実の原則とも呼ばれます。
民法第1条第2項には
「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。」
と規定されています。
この信義則は契約に基づく当事者間の様々な行動のベースになっている規範あるいは原理と考えたら良いと思います。また、契約書がカバーしていない部分(契約書に書いていない部分)について判断するための規範の一つと考えても良いでしょう。
人々がそれぞれ勝手気ままに行動すると、強者が弱者を支配する弱肉強食の社会になってしまいます。そうなると人類の存続にも影響を及ぼすことになるので、人は行動を一定の制御する規範をつくり、それを基盤とする法治国家というシステムを作り上げているわけです。その規範の一つとして、信義則があるわけです。
権利濫用の禁止
権利の濫用(らんよう)は法律で禁止されています。
民法第1条第3項には
「 権利の濫用は、これを許さない。」
と規定されています。
こちらも信義則と同様、法治国家の基盤となる規範と考えたら良いと思います。
本来は法が与えた権利の行使は自由です。しかし、みんながみんな勝手気ままに自分の権利の行使をすると、当然軋轢が生じ、社会として統制ができなくなります。そこでそういった状態にならないように統制する規範が権利濫用の禁止です。
信義則も権利濫用の禁止も重要な観念であることは確かですが・・・
信義則も権利濫用の禁止も、法治国家の根幹にある非常に重要な概念であり、学術的にも一生をかけて研究する対象となるような深遠なテーマです。
もちろん、ビジネスも法治国家の基盤の上に成り立つものですので、信義則と権利濫用禁止を意識したビジネス行動は大事です。これらに反する行動をしているといずれビジネス界で糾弾を受け、場合によってはビジネス界から退場を強いられることになるでしょう。その点はビジネスに携わる者として絶対に忘れてはいけないことだと思います。
ただ、ビジネスの世界は一種の戦いであるという側面もあります。競合する事業者との競争に勝たないと生き残れないのも現実です。したがって信義則や権利濫用禁止といった規範だけを頼りにビジネス活動を進めるのは危険です。
また、信義則や権利濫用禁止の具体的な適用については、当事者の力関係や市場の環境、業界慣習によって違いが出てきます。0か1かで決まるようなデジタルの世界ではなく、極めてアナログ的で相対的な概念です。
つまり適用されるか否かを予測するのは難しいといえます。
したがってやっぱりビジネスの世界で契約書が大事です。その契約書のベースには信義則と権利濫用禁止の概念が存在していることをしっかり意識したうえで、個々のビジネスシーンとリスクに対応した契約書にしていかないといけません。
なるほど。言ってみればビジネスをやる上の道徳みたいなものですね。
契約書で権利と義務を明確に書いておくことが大事ですね。