秘密保持契約のオプション条項解説シリーズ第5回は、損害賠償額の予定(リキダメ)についてです。
こんな条項が・・・
契約規定に反して秘密情報を漏洩した受領者は、合意した予定損害賠償金として1百万USドルを開示者に対して支払うものとする。
ちょっと上の条文を読んでみてください。
「1百万USドルということは、1億うん千万円!! まじか!」
もちろん、漏洩するつもりなんてないし、受領した秘密情報の管理も万全を尽くすつもりだけど、1億円越えの賠償金とはキツイなー。と思う方が大半だと思います。
まれではありますが、海外の巨大企業が提示してくる秘密保持契約のドラフトに上記のような趣旨が入っていることがあります。
これは損害賠償額の予定と言われるものです。
損害賠償額の予定(リキダメ)について
損害賠償額の予定とは、英語ではLiquidated Damagesと言い、これを略して「リキダメ」と呼ぶ法務関係者も多いです。
この「損害賠償額の予定」というのは、契約違反により損害賠償義務が発生した時に、本来なら損害の範囲と具体的な損害額を計算して合意した金額を賠償するということになるのですが、実際にはその損害の範囲と損害額の確定というのは非常にややこしい議論をともなうものであり、なかなか合意できないことも多いです。そこで考え出されるのがこの「損害賠償額の予定」です。
つまりこの「損害賠償額の予定」というのは、契約違反が生じたときには、あらかじめ契約に定めておいた(予定しておいた)一定の金額を損害として賠償するという合意をあらかじめ契約書で規定しておくことです。
ことが生じてから「これは損害の範囲内だ。」「いや、そんなの間接損害で賠償の範囲には入らない。」といった議論を始めることを避けて、損害の証明の必要なくスパッと賠償金額を予定しておくものです。
しかし、多くの場合、この金額は相当に高い金額に設定されている場合が実態です。中小企業にとってはそのような金額を払うと会社が存続しない、あるいはそもそもそんな金額は支払えない、というような金額の場合が多いです。
一般的に、「損害賠償額の予定」は、売買や請負の納期遅延に関して定められることが多く、秘密保持契約で規定されることは実際には少ないです。
しかし、このような条項を提示された場合は、リスクを分析し、条項削除の申し入れも含め十分注意して交渉すべきだと考えます。
こんな条項が入っていたら絶対に削除してもらうしかないですね。
まあ、基本そういう対応になると思いますが、簡単に相手が削除に同意するとは限りません。その場合はさらに踏み込んだ議論になりますね。
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