建設業の許可要件 1-1経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者

建設業法

法律の規定

建設業法第7条
国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。

許可要件の内容

建設業の経営は、他の産業の経営とは著しく異なった特徴(=単品受注生産、長期間の瑕疵担保責任、契約金額が多額、重層的な請負体制等)を有しているため、適正な建設業の経営を期待するためには、建設業の経営業務について、一定期間の経験を有した者が最低でも1人又は経営業務の管理を適正に行うに足る体制が必要であると判断され、この要件が定められたものです。

具体的には、
許可を受けようとする者が、
法人である場合には、常勤の役員のうちの1人が、
個人である場合には、本人または支配人のうちの1人が、
次のパターン1からパターン4のいずれかに該当することが必要です。

パターン1から3が一人で経営体制を担当する場合、パターン4が複数人の経営体制の場合です。
なお、経営業務の管理責任者は、原則として主たる営業所に所属することになっています。

パターン 1
建設業に関し年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者であること。
パターン 2
建設業に関し年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者であること。
パターン 3
建設業に関し年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者であること。
パターン 4(体制で条件充足する場合) ①②のいずれか
①建設業に関し、年以上役員等としての経験を有し、かつ年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者(財務管理、労務管理又は業務運営の業務を担当するものに限る。)としての経験を有する者
に加えて、
常勤役員等を直接に補佐する者として、当該建設業者又は建設業を営む者において「財務管理の業務経験」、「労務管理の業務経験」、「運営業務の業務経験」について、年以上の経験を有する者をそれぞれ置く(一人が複数の経験を兼ねることが可能)ものであること
②5年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、2年以上役員等としての経験を有する者
に加えて、
常勤役員等を直接に補佐する者として、当該建設業者又は建設業を営む者において「財務管理の業務経験」、「労務管理の業務経験」、「運営業務の業務経験」について、5年以上の経験を有する者をそれぞれ置く(一人が複数の経験を兼ねることが可能)ものであること

上記で使用されている用語のなかには、特殊な意味で用いられている場合もあります。また、上記パターン2、バターン3、パターン4①、4②により、申請や変更をしようとする場合は、当該事項に該当するか否か個別ケースごとに審査が行われることになります。
従って、微妙な判断を必要とするときは、行政書士に相談することをお勧めします。

経営業務の経験を確認する資料

さて、つぎは、建設業の経営業務を管理した経験があることをどういった確認資料で証明するかということです。
ここでは、上記4パターンのうち、パターン1の確認資料についてご説明します。

バターン2~4の確認資料については、パターン1の応用ではありますが、かなり複雑でケースバイケースの部分もあります。

なお、ここの確認資料の考え方(件数や原本の要否等)については、許可庁(都道府県等)によって大きく異なります。下記は大阪府の事例でご説明しますが、実際には該当の許可庁の発信情報を必ずご確認ください。

個人事業主としての経験の場合

確認項目書類例ポイント
営業の実態所得税の確定申告書税務署の受付印か電子申告受信通知があること。
営業の実績工事契約書、注文書、請求書等工事内容、工事期間、請負金額が確認できること。確認できた建設工事と次の建設工事との期間が12か月を超えて空かなければ連続した期間、経験があることとされる。

法人の役員としての経験の場合

確認項目書類例ポイント
営業の実態法人税の確定申告書税務署の受付印か電子申告受信通知があること。
営業の実績工事契約書、注文書、
請求書等
工事内容、工事期間、請負金額が確認できること。確認できた建設工事と次の建設工事との期間が12か月を超えて空かなければ連続した期間、経験があることとされる。
常勤の役員商業登記簿謄本・閉鎖謄本、法人税の確定申告書のうち、役員報酬手当及び人件費等の内訳書役員期間が途切れていないこと。

過去に建設業許可を受けていた建設業者での経験の場合

上記、確定申告書や工事契約書、注文書、請求書等の代わりに、
建設業許可申請書、変更届、建設業許可通知書、決算変更届、商業登記簿謄本などの書類を使用して確認されます。

簡単にあきらめないで

経営業務の経験の証明が、建設業許可の難しさの関門の一つで、行政書士の腕の見せ所ともいえます。
手引きに書かれた書類が社内で簡単に見つかればいいのですが、5年以上の長期間にわたって各種の書類を整理して保管しておくというのは、以前から将来は建設業許可をとることを意識しているのでなければ、なかなか難しいかもしれません。

でも、見つからなくても簡単にあきらめないでください。社内に書類はないが、お世話になっている税理士先生のところにあったり、確定申告書だと税務署に保管されている可能性もあります。また、手引きには記載されていない資料で証明できる可能性もゼロではありません。

もちろんもともとありもしない書類を偽造して申請するのは虚偽申請となり、厳しく罰せられるので絶対にやるべきではないですが、証明したいことが事実だと確信されているなら、あきらめずに行政書士等に相談されることを強くお勧めします。