印紙税の起源と現状について

契約書の基礎
どてらいさん
どてらいさん

印紙って、領収書とか契約書とかに時々貼ってある切手みたいなやつのことですよね。

すぎやん
すぎやん

そうそうあの切手みたいなやつが、収入印紙です。でも全ての領収書や契約書に収入印紙が貼ってるわけでもないし、よく見ると収入印紙にはいろんな金額が書かれていて不思議ですよね。

どてらいさん
どてらいさん

領収書は領収金額のランク別に何円の収入印紙を貼りなさいみたいな一覧表が確かあったと思いますが、契約書の印紙税については正直よくわりません。相手方が指定するままに貼っています。

すぎやん
すぎやん

そんなに微に入った話をするつもりもないですが、契約書の印紙税を中心にいくつかポイントをシリーズでご説明していきます。

日本の印紙税の起源について

重要な文書にスタンプを押して課税するという印紙税の起源とも言える制度は、1600年代に欧州で始まったとのことですが、日本で印紙税が導入されたのは明治6年(1873年)のことです。江戸時代から税負担が農業者(土地)に偏重していたのを、印紙税で工商業者にも税負担をさせることでバランスを保とうとすることが目的だったと言われています。
印紙税は文書そのものに対する税金です。ただ、考え方としては、ある取引や商売の内容を記録に残す目的で作成する文書に対して課税することを通じて、実質的にはその中身である取引や商売に対して課税しようというものです。この考え方自体は現在でも同じです。ちょっとお堅いですが、草間久雄・元税務大学校教授の論文から印紙税の目的に関する記述を引用させて頂きます。

印紙税は、文書の作成行為の背後にある経済的利益、文書を作成することに伴う取引当事者間の法律関係の安定化という面に担税力を見出して課税している租税であり、税体系において基幹税目を補完する重要な役割を果たしている。

日本の印紙税の現状について

明治6年以降、何度かの改正を経て、平成元年に消費税の導入に伴い印紙税法の大改正が行われ、賃貸借契約書などいくつかの契約書が不課税になりました。
その後、ビジネス文書のデジタル化が進行している風潮の中、紙の文書に課税する印紙税の廃止論調が時折湧きあがったりしていますが、印紙税導入から150年以上経った2024年現在でも20種類の文書が印紙税の課税文書として指定されています。
令和5(2023)年度の租税及び印紙収入額69.4兆円のうち、印紙収入は0.9兆円で全体の1.3%だそうです。ウェイト的には小さいですが、酒税収入と並ぶ、あるいはたばこ税収入や関税収入を超える約1兆円の貴重な国の収入源です。
さらに言えば、印紙税の負担感を感じるのは基本的に一般庶民ではなく企業等であることから、政治的な観点から印紙税廃止論を後押しする理由はなさそうですし、「印紙税がいやだったら、デジタル化を進めたらいいじゃないか。」というロジックもあり得ますので、国が印紙税を廃止することはまずないだろうと個人的に思っています

かといって軽視はできません。国税局は定期的に企業に対して印紙税調査を行っています。また、何年かに一度、「大手企業○〇社が○〇億円の印紙税納付漏れを国税局から指摘される。」といったニュースが出たりもします。

ビジネスを適法に推進するためには、やや時代遅れ感のある印紙税に対するわだかまりは一旦横においておき、印紙税法に関する正しい知識を持ち、正しく納税義務を果たしたうえで、適法な印紙税の節税方法を導入する取り組みが必要だと考えます。

おまけ 印紙税に関する相談先は?

「印紙税に関する疑問の相談相手はやっぱり税理士かな。」と思われる方も多いでしょう。
ところが、税理士法には、下記のような条文があり、印紙税は対応業務から明確に外されているのです。

税理士法第2条
税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、…を除く…略…)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
1 税務代理…略…
2 税務書類の作成…略…
3 税務相談…略…

つまり、印紙税法に関する専門士業は定められていないのです。
もちろん、税理士の中には国税出身で印紙税に強い先生がいらっしゃいますし、弁護士にも印紙税に強い先生がいらっしゃいます。また、文書の専門家である行政書士にも印紙税に強い人がいます。

何を隠そうすぎやんも、長い企業法務実務の中で多くの契約書等について印紙税の課否検討を行った経験があります。印紙税の相談相手の一つの選択肢としてご検討ください。

どてらいさん
どてらいさん
すぎやん事務所
すぎやん事務所

ばれましたか・・・・(笑)