提示された契約ドラフトに免責条項が書かれていたけど、のまないと仕方ないですかね?
立場によっては受け入れざるを得ないこともあるでしょうが、できる交渉はしておくべきですね。
免責条項とは
免責条項は、契約違反の状態が生じたとしても自らの損害賠償責任は免れるといった趣旨が書かれた条項です。
傾向としては、契約上強い立場の当事者が提示する契約ドラフトやB to Cの利用規約などに織り込まれていることが多いです。一例を下記に示します
当社は、本サービスに関連して生じた契約者及び第三者の損害について、それらの予見可能性の有無にかかわらず一切の責任を負いません。
甲は、甲が納品した本試作品の誤動作により乙または第三者に生じた損害について一切の責任を負わないものとする。
免責条項が提案されたとき
免責条項が提案されたとき、
「まあ取引出来るだけで幸せなんで、少々不満でも飲み込んで契約しよう。」
「試作品だから免責でも仕方ないか。」
「相手は一流企業だし、契約にこう書いてても無茶はしないだろう。」
というような考えで、提案に合意することが多いでしょう。
ただ、ちよっと待ってほしいです。免責条項を削除してくれというカウンターはまず認められないだろうが、条件の見直しは交渉の余地があるかもしれません。
取引内容や業界慣習的にまず起こりえないような場合が生じたときに免責となっていても影響がない場合もあるでしょうが、発生する可能性が高い場合に免責で本当にいいのかというのは、十分なシミュレーションが必要でしょう。
免責条件の議論ポイント
免責条項に関する議論ポイントとしては以下のようなことがあるでしょう。
わざと(故意に)そういう状態になったのに免責でいいのか
わざと(故意に)免責が適用される条件にしておいて免責になる、というのは、許されない場合が多いと思います。次のような条項を追加することを交渉するのもありでしょう。
前項の規定は、〇〇の故意または重過失のときは適用されない。
免責適用条件を絞る
免責が適用される条件を、極力狭めていく交渉です。
これはケースバイケースですが時間的範囲、場所的範囲などさまざまに考えられると思います。
取引内容を勘案し、想像力も入れて検討する必要があります。
変更前
甲は、甲が納品した本試作品の誤動作により乙または第三者に生じた損害について一切の責任を負わないものとする。
変更後(広くとらえうる「誤操作」を「注意表示違反の使用」に限定明確化)
甲は、乙または第三者が本試作品添付の「使用上の注意」に反した使用をしたことにより生じた損害について一切の責任を負わないものとする。
努力義務への切り替え
ハードルは高いですが。免責などと冷たいことを言わず、ことが起こったら協議しましょう。
状況を解消するための努力はしてよ、協力はしてよ(義務じゃないけど)という内容です。
(変更前)
甲は、甲が納品した本試作品の誤動作により乙または第三者に生じた損害について一切の責任を負わないものとする。
(変更後1)
甲が納品した本試作品の誤動作により乙または第三者に損害が生じたときは、その対応について甲乙協議するものとする。
(変更後2)
甲は、甲が納品した本試作品の誤動作が乙から報告されたとき、誤動作発生原因の検証と原因解消のための努力をするものとする。
別途協議とか努力義務は、究極の選択です。多くは期待できないことに注意しましょう。