義務3 契約締結に関する義務

建設業法
建設業法

第18条(建設工事の請負契約の原則)
建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。

第19条(建設工事の請負契約の内容)
建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
(以下、契約に定めるべき事項が列挙されています。省略)

請負契約に定めるべき事項

建設工事の請負契約の当事者(注文者及び請負人)は、契約の締結に際して、次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければなりません。
理論的には、契約は口頭でも成立するのですが、契約の内容や範囲を明確にし、後日の紛争を防止するために、建設業法は、建設工事の請負契約を「書面契約」とすることを必須としています。

建設工事の請負契約書に記載が必要な事項は次の通りです。

  1. 工事内容
  2. 請負代金の額
  3. 工事着手の時期及び工事完成の時期
  4. 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
  5. 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
  6. 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
  7. 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
  8. 価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
  9. 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
  10. 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
  11. 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
  12. 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
  13. 工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
  14. 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金、その他の損害金
  15. 契約に関する紛争の解決方法
  16. その他国土交通省令で定める事項

建設工事標準請負契約約款

契約の内容は当事者の合意で定められるものですので、当事者が話し合って契約書を作りあげていったらいいのですが、実際には上記必要事項が規定された請負契約書をいちから作成するのは大変ですし、そもそも発注者と受注者の関係で対等に契約内容を協議できるかという問題もあることから、下記の団体が工事契約約款を作成し、ホームページで公開しています。

もちろん請負契約は絶対にこの約款によらなければならないということではないですが、交渉の参考にされることをお勧めします。

国土交通商中央建設業審議会建設工事標準請負契約約款 など
民間(七会)連合協定工事請負契約約款委員会工事請負契約約款 など

建設工事の見積もり等

建設業者は、建設工事の請負契約を締結するに際しては、工事の内容に応じ、工事の種別ごとの材料費、労務費その他の経費の内訳並びに工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を明らかにして、建設工事の見積りを行うよう努めなければなりません。
また、注文者から請求があったときは、請負契約が成立するまでの間に、建設工事の見積書を提示しなければなりません。
注文者は、当該工事について、地盤の沈下その他の工期又は請負代金の額に影響を及ぼすものとして国土交通省令で定める事象が発生するおそれがあると認めるときは、請負契約を締結するまでに、建設業者に対して、その旨及び当該事象の状況の把握のため必要な情報を提供しなければなりません。

また、下請が適正な見積もりを行うことができるよう、元請が下請に対して見積り依頼をする際には、下記の期間を設けなければならないとされています。

1件の下請工事の予定金額見積り期間
500万円未満の場合1日以上
500万円以上5,000万円未満の場合10日以上
5,000万円以上の場合15日以上
※ただし、やむを得ない事情があるとき、②と③の期間は、5日以内に限り短縮することができます。

契約の保証

建設工事の請負契約において請負代金の全部又は一部の前金払の定めがある場合には、注文者は、建設業者に対して前金払をする前に、保証人を立てることを請求することができます。
ただし、工事1件の請負代金が500万円未満の工事又は「公共工事の前払金保証事業に関する法律」に規定されている保証事業会社の保証に係る工事は対象になりません。
また、上記の請求を受けた建設業者は、次のいずれか一方の保証人を立てる必要があります。
①建設業者の債務不履行の場合の遅延利息、違約金その他の損害金の支払の保証人
②建設業者に代わって自らその工事を完成することを保証する他の建設業者
なお、注文者のこの請求に対し、建設業者が保証人を立てないときは、注文者は、請負契約の定めにかかわらず、 前金払をしないことができます。

一括下請負の禁止

建設業者は、その請け負った建設工事を一括して他人に請け負わせてはなりません。
また、建設業を営む者は、建設業者からその建設業者の請け負った建設工事を一括して請け負ってはいけません。
ただし、民間工事(共同住宅を新築する建設工事は除く。)で、元請負人があらかじめ発注者から書面による承諾を得た場合を除きます。

不当に低い請負代金の禁止

注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金とする請負契約を締結してはなりません。

不当な使用資材等の購入強制の禁止

注文者は、請負契約締結後、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事に使用する資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを請負人に購入させて、その利益を害してはなりません。

著しく短い工期の禁止

注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはなりません。