秘密保持契約の主要条項解説シリーズ第10回は、発明等に関する規定です。
発明等に関する規定のサンプル
1.甲または乙は、本検討の過程で発明、考案または意匠の創作(以下「発明等」という)をなしたときは、直ちに相手方にその旨を通知する。当該発明等にかかる特許、実用新案登録または意匠登録を受ける権利については、相互の貢献度を考慮して出願前に甲乙協議し、以下に定めるところに従い、その帰属を決定する。
(1) 発明等が甲および乙の共同でなされたとき 甲および乙の持分均等による共有
(2) 発明等が甲または乙の単独によりなされたとき その者の単独所有
2.前項第1号の場合、発明等の出願は甲および乙が共同で行うものとし、その手続等に必要な費用は甲および乙の均等負担とする。
発明等に関する規定の内容
実務現場では開示目的の検討の過程で発明等をなすことがあります。そのようになされた発明等および特許権等の帰属に関する規定を秘密保持契約に入れることも一般的です。
今回の条文サンプルは均等帰属とするものですが、開示される秘密情報の量や内容(重要性)に応じて、サンプルと異なる規定、すなわち、貢献度に応じて持分割合を決める等の規定とすることも当然可能です。
発明等に関する規定のチェックポイント
秘密保持契約で発明等帰属の規定をいれる提案をすると、「その条項は削除してくれ」という反対意見を頂くこともわりと多くあります。
その理由としては、「秘密情報は発明等を生み出すために開示するわけではないのでそのような条項は不要だ。」「秘密情報の開示目的外使用を助長するのではないか。」などというものです。
そういった意見に対しては、「確かにその面もあるが、この条項は本検討の中で副産物として発明等が生じた場合の規定です。」と説得し、納得いただくことが大半です。
また規定の趣旨を明確にするため、相手方から開示された秘密情報を参照してなされた発明等の帰属であることを明確にする提案を行うこともあります。
さらには、開示を受けた秘密情報を参照していて副産物として想定していなかった発明をなしたときに開示者に無断で出願することをけん制するために、発明等の帰属は明記せず、発明等をなしときは出願前に相手方に通知して取り扱いを協議するという趣旨の条項にすることもあります。下記代替条文例をご参照ください、
代替条文例
発明等が相手方から開示された秘密情報に基づきまたはこれらを参照してなされたときは、その内容及び経緯等を相手方に通知し、発明等に係わる権利の帰属および取扱いについて協議する。
この条項にしておくと、相手が「だまてん」で特許出願することをある程度制御できそうですね。
そうですね。ただ、逆の面から言うと、相手方の秘密情報を参照してなした発明か、そうではない独自の発明かという区別は発明をなした方で行うことになりますので、その点客観的に証明できるようにしておくべきですね。
開発経緯を記録しておくことが大事なようですね。
行政書士すぎやん事務所では実務に適合した秘密保持契約の作成を行っています。ホームページをご覧ください。