契約相手はいったい誰?

あぶない契約書
どてらいさん
どてらいさん

契約相手が誰かわからなくなるってあり得るの?

契約書の前文や捺印欄を見たら一目瞭然でしょ?

すぎやん
すぎやん

まあ普通そうなんですけど、契約の書き方によっては誰が契約相手かわからなくなったり、知らない間に契約書に記載された相手方が他人にすり替わってしまうようなこともあるんだよ。

契約相手に期待すること

ちなみに、契約当事者として契約相手に対して期待することは以下のようなことです。

  • 契約書に書かれていることを理解してくれている。
  • 契約書に書かれていることを守り、実行してくれる。
  • 契約書に書かれていることに違反したら、責任を取ってくれる。

契約相手がわからなくなったり、他人に置き換わったりすると、これらの期待が裏切られる可能性もあるので、注意した方が良いです。

契約相手が不明瞭になることのパターン

契約相手がわからなくなる主なパターンとしては以下のようなものが考えられます。

  • 親会社、子会社、関係会社を巻き込んで契約をしているようなパターン
  • 会社(法人)の契約か個人の契約かよくわからないパターン
  • M&Aを繰り返しているパターン

親会社、子会社、関係会社を巻き込んで契約をしているようなパターン

契約書の前文に、

ABC販売株式会社(その関係会社を含み、以下「甲」という)とXYZ株式会社は、以下の通り合意する。・・・

と書き、押印欄にABC販売株式会社の押印しかない場合、このパターンに陥る可能性があります。

特にABC販売株式会社が大企業のABC株式会社の子会社である場合とか、ABC販売株式会社が多数あるグループ会社の一員である場合などは契約相手が不明瞭になってしまい、上に述べた契約相手に対する期待が損われる可能性があるので注意が必要です。

契約書に押印・署名している会社・人のみが、上記契約相手に対する期待に応えてくれるという前提を念頭において、契約書を作成していくことが必要です。

会社(法人)の契約か個人の契約かわからないパターン

押印欄に会社名とその会社の従業員である押印者の氏名が記載してあり、その押印者の個人印しか押印していない場合、このパターンに陥る可能性があります。
当該会社としては、「その押印者が会社に断りなく個人として締結した契約であり、当社は契約当事者ではない。」という言い訳はあり得ます。
実際には、表見代理という法理論がありその言い分が通じる可能性は低いのかもしれませんが、疑義が生じる可能性は否定できません。

会社(法人)と契約する場合には、いわゆる社印、法人の代表者印、職印といわれる会社(法人)が正式に認めた印章を押印するようにするべきです。
締結者の個人印だけで提案されたときには、社印を添えて押すよう要求したほうが良いです。

M&Aを繰り返しているパターン

契約相手が事業譲渡や会社分割、合併を行う場合、契約書に書かれている内容に関連する事業が、当初の契約相手から他の会社に転移します。
それが1回だけだと混乱する可能性は低いが、何度も繰り返す場合もあり得ます。そうなるとこのパターンに陥る可能性があります。

その点、そのようなM&Aを行う場合、契約相手方には書面などで正式な通知を行いますので、その通知をきちんと保管管理してトレースできるようにしておくべきでしょう。
また、場合によっては事業を承継した会社と契約書を再締結することを要求してもいいでしょう。

すぎやん
すぎやん

まあ、契約書を時々確認するとか、契約先との日常のコミュニケーションをしっかりしていたら、このようなリスクが顕在化して困ることはないでしょうね。

どてらいさん
どてらいさん

確かに。契約書を結んでほったらかしというのが一番いけないのですね。